2024.1.23

2023年のAikomiを担うニューフェイスの経営陣とは?

2023年のAikomiを担うニューフェイスの経営陣とは?
2023年のAikomiの可能性に共感したニューフェイスの経営陣。創業メンバーではない2人が、Aikomiの舵取りに込めた想いとは?

——新CEO今林さんの経歴紹介。社会課題に対する想いとは?

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私は大手メーカーで会社員として15年勤務し、そのうち5年ほど新規事業チームで新規事業立ち上げの検討を行なってきました。コミュニティや認知症、超高齢社会という社会課題に対して問題意識を持っていたので、高齢団地の話があれば2ヶ月ほど潜入取材に出向いたり、介護福祉の転ばない靴やシルバーカーを作っているメーカーがあれば取材にいくなど行なっていました。
メーカーを退職し、Co-Studioの立ち上げに参画し、3年ほど新規事業の伴走支援を始めました。株式会社do.Sukasuという会社で、VR技術を用いて運転技能を評価する新規事業の立ち上げや、高齢者にとって心に傷を負った人のための音楽療法を用いて処方箋を出すコンセプトの会社の立ち上げ(528株式会社)にも関わりました。
自分の中では、高齢社会や社会課題解決という軸は、会社員時代もCo-Studioもぶれずに持っていると感じます。

528(株)において、高齢者が通う施設で特別な音楽を製作して使っていただく検討をする中で、ITツールで高齢者の五感刺激を行い、記憶機能や情動機能を活性化しようとするAikomiに出会いました。はじめは、五感刺激のひとつである聴覚への作用を狙って、528が音楽コンテンツを提供できないかという”実験的”試みからスタートしました。その後、コンテンツ製作だけではなく、事業開発や技術開発の観点でも相互に親和性が高いことが見えてきたため、Co-Studioの伴走支援スキームを使って経営の一部を担う検討を開始しました。

——528株式会社とAikomiの出会いとは?

住友ファーマさんにご紹介いただきました(2020年頃)。当時のAikomiは介護施設にIT端末を持ち込み高齢者や介護職員に向けた実験を必要としていましたが、コロナ禍で思うように実験ができませんでした。528のJesseさんがネットワークを持っている西宮の施設にご協力をお願いし、共同で実験に取り組んだことからの繋がりです。

——COO平田さんの経歴紹介と社会課題に対する想いとは?

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マスコミやメディアの世界で主に社会福祉関連のテーマを取り扱うディレクターでした。医療や福祉、介護をテーマにした「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」など情報系の番組や「ハートネットTV」という福祉の番組づくりに携わってきました。

福祉の現場を取材する中で、「社会の中で生きづらさを抱える人たちの声を聞いてこの現実を世の中に伝えていこう」と思いながら仕事をしてきました。その中で、自死の問題などの社会課題を取材する中で「認知症」というテーマに出会い、認知症と診断された本人が社会での生きづらさを持っていることを目の当たりにしました。
この先自分がどうなってしまうのか、社会との繋がりを断たれてしまう方が多いことを知り、現状をどうにかしないといけないと感じながら仕事をしていました。

社会課題に向き合いながらメディアの立場ではなく、プレイヤーの立場で一人一人と関わって社会課題を解決していきたいと思い前職を退職。退職後は、デイサービスの運営に携わったり、地域で認知症の人の居場所を作る非営利の活動にも参画してきました。そんな時にAikomiに出会いました。家族や本人も社会と繋がりながら生きていこうというアプローチに社会を大きく変えていく可能性を感じ、Aikomiにジョインしました。

——Aikomiの企業紹介を簡単にお願いします。

平田さん:Aikomiはテクノロジーの力を使って、認知症の本人と、家族そして介護スタッフとの関係性をつむぎなおすデバイスやアプリを提供している会社です。
パーソンセンタード・ケアとは、文字通り「人中心のケア」ということで、認知症のある本人とそのまわりの人との関係性に着目したケアのあり方ですが、映像の力を使ってその人にまつわる環境や、好みなど視覚的な情報を提供することで、周囲とのコミュニケーションを円滑かつ活発にしていきます。
その中で、記憶機能や情動機能(安心感が生まれたり、落ち着いたり)等に働きかけていくことが特徴です。その映像コンテンツを、離れた家族や、介護職員と一緒に見たりできます。映像や音楽の力で、認知症のある方の周囲との関係性や心身の機能向上を目指しています。パーソナルな記憶や感情にテクノロジーの力で働きかける「人に寄り添う技術」を追求しています。

Aikomiの創業者は元々製薬会社の研究者です。薬の開発を行なっていましたが、認知症という課題には、薬以外のアプローチが欠かせないのではないかと考えたことがきっかけです。認知症に対しての課題は、薬も重要ですが「人と人との関わり」が最も重要なファクターだと気づきAikomiが設立されました。

また弊社の具体的なサービスは3つあります。
「Aikomiケア」(試験販売中)
  1:1で家族とタブレットで映像を一緒に見て利用する
「Aikomi DS」
  介護施設でスタッフと利用者と1:1で利用(2023年7月ローンチ)
  個別機能訓練を実施し、介護保険の加算がとれる仕組み、カスタム可能
「Aikomi FAN」(開発中)
  介護施設でグループで利用

——Aikomiの試験販売やローンチに向けて大変だったことは?

平田さん:これがとても良い商品で、認知症の方がコミュニケーションを取れたり、家族との関係性がよくなるなど成果を感じています。
ただ、高齢者が1人でタブレットを使いこなすにはハードルが高く、良いものが活用されない環境がありました。そこを打破するために、まずは介護施設で負担なく利用できる環境を整えることに絞りました。

——今林さんが新CEOとしてAikomiの参画時期とご自身の役割とは?

今林さん:正式には、2023年6月22日の株主総会以降です。それまでも、AikomiDSが立ち上がっていく過程や、Aikomiの価値や課題に対してAikomiメンバーが取り組む姿を外から見ていたのが4〜6月でした。
CEOとしての役割は、とにかく経営の健全化です。2023年7月にAikomiDSをローンチして早速契約が2件決まりました。
具体的にお客様に使っていただくことが始まり、社会から必要とされる会社、製品であり続けるための仕組みがいま必要です。良いものをどのように訴求し、使ってくれるユーザーを増やして、いかに多くの人に届けるか、その施策を考えるのが私の役回りだと考えています。

——なぜAikomiに共感して、参画しようと思いましたか?

今林さん:社会課題解決へのまっすぐな道のりに思えるからです。Aikomiの商材は、使った人には効果が見えて「価値」をお届けできますが、なにせユーザー像が「認知症の方」なのでITツールを使い始めること、使ったことによる効果を評価することに高いハードルが存在します。
そのハードルと向き合うとき、オムロンが血圧計を高齢者の家庭への普及に成功した事例を思い出します。長い時間をかけて「高血圧」という指標を世界中の誰もが知る数値に仕上げ、血圧計と言えばオムロンといわれるほどのいわば「文化」を形成した歴史には学ぶ点がとてもたくさんあります。
新しいものが社会実装されるときは必ずハードルがありますし、それを乗り越えていくベンチャーマインドがワクワクの源でもあります。
簡単なタブレットで仕上げているとはいえ、使用対象が高齢者向けであり、且つ認知症が見え隠れしている方が使いこなすのは一定のハードルがあります。良いものだけど、届けられないというジレンマもあります。

—— お二人のこれからの展望をお聞かせください。

平田さん:長期的な所で、IT機器が認知症の手元に届くことへの可能性を感じています。物理的には外に出られなくてもタブレット端末が窓になり他者とつながることをイメージしています。
「全ての家庭に1枚」を目標に、全ての人と、認知症の人が繋がることを願っています。

短期的な所では、Aikomiの取り組みが日本の介護を根底から変える可能性を秘めていると思っています。弊社のサービスは個別機能訓練から入っていますが、世の中には認知症の人にこうしたアプローチをする取り組みが現状ほとんどありません。このタブレッドの導入が叶えば、「認知症の人たちとの関わりが大きく変わる」そのきっかけになりたいなと思います。

今林さん:今、経営が軌道に乗るか乗らないかの分かれ道だと思っています。自分自身の役割として、まずは経営を軌道に乗せるための課題解決をし、世の中にAikomiの価値を受け入れてもらい、価値をお金に変えていくことにフォーカスします。その中で必要な技術開発だったり、創業者の社会課題に対する想いや貢献を意識しながら軌道に乗せていきます。Aikomiメンバーの夢も、結実させたいです。

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