2022.5.3

社内ベンチャーのメリットとデメリットとは?成功のコツを4つ紹介

社内ベンチャーのメリットとデメリットとは?成功のコツを4つ紹介
急激なトレンドの変化に対応するための1つの策が、社内ベンチャーです。この記事を読むことで社内ベンチャーのメリットやデメリットがわかるので、社内ベンチャーに取り掛かろうとしている方や、検討している方は読み進めることで、立ち上げに必要な情報が見えてくるはずです。

社内ベンチャーとは?

社内ベンチャーは企業が新しいイノベーションを生み出すために取り入れている制度です。

企業の場合は収益の柱を作るだけではなく、高いマネジメント能力が必要で、新規事業をまとめあげられるような、経営のできる人材を育成する目的がある場合があります。

「企業が安定しているから社内ベンチャーには乗り込まない」という方がみられますが、社内ベンチャーは一朝一夕に成功や失敗を測れるものではありません。既存事業が安定しているうちに、1つの事業に依存しない体型を作っておくことが必要です。

個人の場合でもメリットが多く、社内ベンチャーを成功させると収益アップや役職を与えられることがあるでしょう。最大のメリットは、うまくいけば独立して個人で事業を立ち上げるよりも、リスクを少なく新規事業を始められることです

以下の章では各メリットについてより具体的に解説していきます。またメリットだけでなくデメリットも存在するため、判断材料にするためにも読み進めてみてください。

社内ベンチャーを立ち上げる方法

本章はリクルートグループ会社の従業員が、新規事業立ち上げを提案できる制度である「Ring」を参照してご紹介します。リクルートは「スタディサプリ」や「ホットペッパー」など多数の社内ベンチャーで有名な企業です。

1.ワークショップ
2.エントリー(プラン提出)
3.1次審査
4.ブラッシュアップ期間
5.2次審査
6.最終審査

上記はRingで行われている、社内ベンチャー選考の順序です。

新規事業と立ち上げは通常業務にはない、客観的視点や数値を検証する作業があり、エントリーに気が乗らない人が多くいるでしょう。Ringでエントリーの障壁をなくすためにワークショップで新規事業開発の基礎を教えています

東洋経済によると、ワークショップのおかげもあってかRingのエントリー数は2022年時点で毎年約1000件です。

Ringはキャリアアップにもってこいの制度と言えるでしょう。各審査には立場や年齢が関係なく、経験を積ませるために採用することもあります。キャリアアップを目指せることもエントリー数が多くなる理由でしょう。

1次審査に通ればブラッシュアップです。調査をしてさらに細かな情報を集めていく段階で、新規事業開発室の会計管理やWebマーケティングといった手厚いサポートがあるため、初めての新規事業であっても迷わず進めることができます。

リクルートではRingという社内ベンチャー支援制度は、エントリーのしやすさや年齢を判断材料にしないため、キャリアアップのためにも募集が集まりやすくなっているでしょう。

国内有数の社内ベンチャー立ち上げ企業を参考にして、社内ベンチャーに必要な制度を取り入れてみることも必要かもしれません。

社内ベンチャーのメリット

社内ベンチャーには企業側と担当者側の両方にとても大きなメリットがあります。「周りに認められるようなキャリアを積みたい」「企業をしたい」と野望を持っている方や、「今の企業に役立ちたい」と考える方はぜひ本章を読み進めてください。

企業側

企業が社内ベンチャーに取り組むメリットは主に以下の3つです。

・新たな収益源が増える
・優秀な人材を育成できる
・新規事業立ち上げのノウハウを獲得できる

令和初期では市場トレンドの移り変わりが激しく、既存事業がいつ機能しなくなるかわかりません。収益源を複数持っておくことで激しい市場トレンドに対応し、企業を存続させる可能性を引き上げることができるでしょう。

企業はリーダーになれるような優秀な人材育成に力を入れる必要があります。社内ベンチャー成功のためには、マネジメントスキルをはじめとした経営スキルが不可欠です。

従業員として働くだけではなかなか経営スキルは身に付かず、優秀な人材が頭角を表すことがありません。新規事業を立ち上げ運営していくことは人材育成にうってつけの機会と言えるでしょう。

社内ベンチャーを何度か立ち上げていくうちに、社内ベンチャー成功までのノウハウや成功体験を得ることができます。ノウハウがあることで新規事業の成功率を高め、市場トレンドが変化した時にも、新規事業を立ち上げて波に乗りやすくなるでしょう。

3項目とも重要にはなりますが、社内ベンチャー立ち上げのためのノウハウを蓄積しておくことが、長く経営していく上での鍵となります

担当者側

大きなメリットの1つに、個人で事業を展開するよりもリスクが少ないことが挙げられるでしょう。

個人で企業するとなれば、銀行で借り入れをして自分でお金を用意したり、人材を用意したりして立ち上げのための資源確保段階で時間がかかり、事業がうまくいかなかった場合のリスクが大きいです。

社内ベンチャーとして立ち上げれば、企業が必要資金を用意してくれたり、優秀な人材を回してもらえることがあり、個人のリスクが少なくすみます。

また社内ベンチャー立ち上げのメンバーとなれば、事業の成功によって給料が上がり、社会的にも信用が増すため次のキャリア形成にも役立つ強い武器となるでしょう。

新規事業がうまくいけばその事業で独立することもできるため、「起業をしたい」と考える方にはもってこいの制度です

社内ベンチャーのデメリット

社内ベンチャーはメリットが大きいと紹介しましたが、メリットがあるところにはもちろんデメリットも存在します。企業側を担当者側に分けてどんなデメリットが存在するのかを紹介していきます。

企業側

企業側の視点では、失敗する可能性が高くなってしまうことがデメリットとして目立ちます。

社内ベンチャーが成功する確率は高くても1割と言われており、新規事業立ち上げのために既存事業から人材や資金を投入するリスクを考えると、高い成功率とは言えません。

また社内ベンチャーは立ち上げにあたって、個人が抱えるリスクが少なくなってしまうため、立ち上げのメンバー一人ひとりのモチベーションが維持されず、取り組んでいるあいだに熱が冷めてしまう傾向にもあります。

メンバーのモチベーションが低下することは、調査や分析といった細かな作業がある社内ベンチャーの立ち上げにおいて、成功に大きく関わってくるでしょう。

立ち上げて失敗となれば、既存事業を勢い付けることが出来たかもしれない人員と資金を失うことになります

発明家のトーマス・エジソンが「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」と言ったように、失敗はデメリットではなく次の社内ベンチャーがうまくいくためと割り切ることで、成功に繋がるかもしれません。

担当者側

メリットの部分では人材や資金といった、社内ベンチャー立ち上げに必要な企業にある資源を活用できると紹介しましたが、無限に活用できるわけではありません。

大企業であるほど活用されていない浮いた資源は存在する傾向にありますが、企業の規模が大きくなければ資源が余っていることが少なく、社内ベンチャーを立ち上げようとしても時間や人材を割くことができないということも多いです。

人材が確保できないとなった場合、自分が今抱えている既存事業のタスクに加えて新規事業のタスクがかかってくることもあります

社内ベンチャー立ち上げ段階では企業の中でも信用がなく、新規事業が忙しくなり既存事業を疎かにしてしまうと、既存事業の部署から痛い視線を送られることもあるでしょう。

社内ベンチャー成功のポイント

社内ベンチャーは成功すると企業も運営者も得られるメリットが多いため、挑戦する価値があります。デメリットを回避するためのポイントがあるので、失敗したくない方はぜひ本章を読んで取り入れてみてください。

撤退する基準を明示する

社内ベンチャー立ち上げにおいて、撤退基準を数値化や明文化して明確に決めておくことが重要です。

よくある失敗例として、社内ベンチャーを立ち上げたはいいが業績が思うように伸びず、「まだ伸びるはず」と強気になって赤字が黒字に反転することなく、ズルズルと続けてしまうことが挙げられます。

社内ベンチャーが成功する確率が高くて1割と言われているため、失敗した時にどれだけ損失を回避するかが重要です

失敗を許容する文化を創る

とくに日本で多くみられる傾向です。日本では失敗というと負けや残念なイメージが連想されますが、ビジネスを牽引するアメリカでは「Misstake」と言われて次は頑張れというニュアンスが混じります。

「失敗は悪」といった考えがあることで、社内ベンチャーを立ち上げてうまく行かなかった場合に、責められる姿を想像してしまうことが、挑戦できなくなる要因の1つです。失敗を恐れることは、革新的なアイデアが生まれにくい環境になってしまうでしょう。

日本の文化を変えることはできないため、社風を変えることで従業員が挑戦できる企業に改善が可能です。リクルートグループで新規事業が多く輩出されている理由に、従業員が挑戦するための社風があるからと考えられます。

現場からのボトムアップ型で創る

ボトムアップ型と反対の言葉にトップダウン型があります。トップダウン型の特徴は、担当する人の当事者意識が少なく熱量が乏しいことです。上層部からの指示で現場にいる人が動くため、「やらされてる感」に包まれてしまいます。

しかしボトムアップ型であれば、自発的に現場の人間が問題に取り組むようになるため、熱量を高くして調査や分析といった細かい作業にも対応していくことが可能です

前述したリクルートグループのRingでも、審査にエントリーした人の熱量も加味しているため、社内ベンチャー立ち上げにはやり遂げるための熱量が大切ということがわかります。

既存事業の非延長線上を考える

長年培った自社の強みを生かすために、既存事業と同じ市場に新規事業で参入するケースが多くあります。間違いではないですが、既存事業の関連を考えすぎることはイノベーションが起きにくくなったり、アイデアが出にくくなる原因になるでしょう。

自社の事業が全て同じ市場で固められていた場合、競合の新規事業が市場のシェアを奪い取っていったときに、自社の事業が全てうまく行かなくなることもあります

社内ベンチャーを立ち上げる時には、リスク分散とアイデア創出のためにも既存事業に縛られないように考えましょう。

社内ベンチャー成功事例3選

社内ベンチャーが企業の利益に貢献する大きな事業となっているケースが、いくつかあります。本章では中でも担当した個人に大きな影響を与えた事業の紹介です。

出世や独立願望のある方には刺激となる事例ですので、読み進めて自身の指針となるように読み進めてください。

スタディサプリ/株式会社リクルート

前述したリクルートグループの新規事業支援制度である、Ringで2011年グランプリを受賞して社内ベンチャーとして立ち上げ、多くのユーザーに使用されているのがスタディサプリです。

2022年時点では日本だけでなく海外にも展開しており、リクルートグループの中でも収益の柱の一つとなっています。

スタディサプリの立案から立ち上げまでを成し遂げた方が、西山亮介さんです。西山さんは2019年にはTOKYO MIX CURRYを立ち上げており、リクルート在籍時の成果が後押しになっているでしょう。

社内ベンチャーの立ち上げを目指すことで、成功体験による自信がついて独立への一歩を踏み出すことができるかもしれません

SHOWROOM/株式会社ディー・エヌ・エー

メモの必要性について語った書籍でお馴染みの、前田裕二さんが立ち上げたことで有名なSHOWROOMは、前田さんが株式会社ディー・エヌ・エーに在籍していたときに、社内ベンチャーとして立ち上げた事業です。

社内ベンチャーにおける個人のメリットで紹介したように、個人のリスクが少ない状態で新規事業を立ち上げ、成功した事例と言えるでしょう。

大手企業のバックアップがある中で、新規事業立ち上げから軌道に乗るまでをおこない、事業がうまくいって独立させることも可能で、前田さんは代表取締役という肩書きと影響力を手に入れています

スープストックトーキョー/三菱商事

遠山正道さんが社内ベンチャー企業として立ち上げたのが株式会社スマイルズであり、スープストックトーキョーです。2022年時点でスマイルズは複数の飲食業に加え、コンサル業も手がけています。

遠山さんは、大手通信事業者のKDDIの会長を務めた経歴をもつ牛尾治朗さんに、「経営者に向いている」と言われたこともあるとされており、事業の立ち上げは名の知れた実業家の目を引き、著名人との人脈が広がることにも繋がるでしょう

まとめ

社内ベンチャーを立ち上げる企業は今や大企業だけではありません。しかし規模が大きくない企業は資金や人材といった経営資源が不足する傾向があります

またノウハウが蓄積されておらず、何から始めたらいいのかわからない状態になることもかんがえられるでしょう。

市場トレンドが目まぐるしく変化する世の中で、社内ベンチャーは企業存続のために必須となる戦略ですが、いきなり取り掛かってもうまく行かないことも多いため、テンポ良く進めていくためにもプロフェッショナルであるコンサルを利用してみることも手段の一つです。

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